最も多い性感染症
いくつかの種類がありますが、感染者の激増しているのは「クラミジア・トラコマティス」というタイプで、多くは、性行為により性器粘膜で感染を起こします。
オーラルセックスで口中にクラミジア菌が感染すれば咽頭炎・慢性の扁桃腺炎などを起こし、風邪のような症状がでます。菌があるところに接触すると感染しますので、性器に感染していても口中に菌がいなければキスでうつることはありません。また、眼の粘膜に感染して、トラコーマという結膜炎を起こしたり、妊娠時に感染した場合、乳児の呼吸器に感染してクラミジア肺炎を起こすこともあります。妊娠中の女性の場合は、このような母子感染をするので、注意が必要です。
クラミジアは、喉、直腸、尿にもでるので、口、肛門、尿を使った性行為も危険です。感染者はHIV(エイズ)への感染率が通常の3~4倍になるという統計もあるので、検査する際は併せてエイズ検査もすることを勧めます。
パートナーが1 人だからといって安心できないし、性行為をした人は誰でも、たった1回の性行為でも感染する可能性があります。しかし、コンドームなどの使用による性器粘膜の接触を伴わない行為や、お風呂場や空気感染などの間接的な感染はほとんどありません。
クラミジアの主な症状
性別 | 男性 |
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無症状の 割合 |
50~60% |
潜伏期間 | 1~3週間 |
症状 |
|
感染したまま知らずにいると? |
|
性別 | 女性 |
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無症状の 割合 |
約80% |
潜伏期間 | 1~3週間 |
症状 |
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感染したまま知らずにいると? |
|
クラミジア・トラコマティスの感染経路
【男性】
クラミジア→性感染症(STD)として感染(尿道炎・精巣上体炎)
【女性】
クラミジア→子宮頸管炎[→産道感染(新生児結膜炎・新生児肺炎)]→子宮内膜炎[→絨毛羊膜炎(流産・早産)]→卵管炎[→卵管狭窄・卵管閉塞(卵管性不妊・子宮外妊娠)]→子宮付属器炎→卵管周囲癒着→卵管通過障害→骨盤腹膜炎→肝周囲炎
クラミジア・トラコマティスの病態
- 尿道炎
- ・潜伏期間は1~ 3週間と長く、症状も軽い。(症状:軽い排尿時痛、水っぽい膿が尿道から出る。)
- ・放置すると前立腺炎、精管炎などを引き起こすこともある。
- 精巣上体炎
- ・一般に症状は軽度であり、発熱もはっきりしないことがある。軽度の陰嚢部痛があり、精巣上体全体に腫脹と圧痛を認めることが多い。
- 子宮頸管炎
- ・おりものと不性器出血が症状としてあらわれる。しかし、この段階では下腹部などで痛みを感じることは少なく、自覚症状を伴わないことが多い。白色の水っぽい膿がおりものとして出てくる。不性器出血は、頸管分泌物の混じった少量の持続性の出血をみることもある。
- 子宮付属器炎
- ・クラミジアに感染して比較的早い時期に発症することが多い。下腹部に軽い痛みがあり、子宮頸管炎の症状を伴うことが多い。
- 骨盤腹膜炎
- ・下腹部の痛み、性交時に痛みを強く感じるようになる。
- 肝周囲炎
- ・上腹部に激しい痛みを感じるようになる。
- 不妊症、流産の原因の恐れも
- ・女性がクラミジアに感染した場合、その体の構造から速やかに上腹部へと感染が浸透していき、短期間に腹腔内へ波及する恐れがあります。
- ・感染初期には自覚症状がなく、治療対象にならないものが、長期間を経て骨盤腔へ波及し、卵管閉塞、卵管周囲癒着を引き起こし不妊症の原因となる傾向がある。
- ・不妊症患者の所見を見るとクラミジア抗体陽性者の80%に卵管周囲の癒着が認められ、60%に卵管閉塞が認められている。
- ・妊婦に感染するとプロスタグジンを活性化させ、陣痛誘発させ、この為妊娠初期では流産の原因となり、妊娠中期では早産の原因となる。
検査
1)クラミジア抗原の検出
現在感染しているかどうかがわかります。確実なクラミジアの存在が証明されるため、陽性の場合は必ず治療が必要となります。
a)即日検査(1時間後に結果報告)
【男性】採尿による検査
【女性】子宮口ぬぐい液による検査(自己採取可)
b)PCR法(翌日~翌々日に結果報告)
【男性】採尿による検査
【女性】膣分泌物による検査(自己採取可)
2)血中クラミジア抗体(IgA、IgG)の検出
抗体検査(3~5日後に結果報告)
【男性・女性】 採血による検査
クラミジアの治療
男性でも女性でも、抗生剤の内服による治療となります。
- アジスロマイシン単回内服
- クラリスロマイシン・ミノサイクリン・ドキシサイクリンなどの7~14日間の内服
- (1)の単回内服は一度内服した薬の成分が約10日間持続して効果が続きます。(2)と比べると飲み忘れが無い点、薬の成分が新しい点などからおすすめしています。
- 有効率は90%前後となり100%ではないため、確認検査が必要です。
- 途中、飲酒をすると治癒率は下がります。
- 内服中でも新しい交渉を持つと再感染する可能性があります。
- 精巣上体炎や前立腺炎などの尿道以外の臓器の感染がともなっている時は、(1)(2)を併用したりすることもあります。
パートナーの理解と協力
重要なのは、セックスパートナーの理解と協力です。本人だけが完治しても再発を繰り返す可能性が強いので、パートナーも一緒に検査を受けて同時に治療を行う必要があります。パートナーが複数あるような場合は再感染がおこりやすいので2ヵ月に1度は、クラミジア・トラコマティスにかかっていないかを調べてもらうことがよいでしょう。
コンドームが予防の決め手
性器クラミジア感染は
- 25歳以下の若年女性
- 3ヵ月以内に新しいセックスパートナーor1年以内に2人以上のセックスパートナーのいる女性
- コンドーム未使用者
- 経口避妊薬(ピル)使用者
- STDの既往のある女性
- commercial sex worker
- 人工妊娠中絶目的の女性
に感染することが少なくありませんが、性行為の最初からコンドームをきちんと使えば感染を防げます。(オーラルセックスでも同様)
最後に
クラミジア感染の怖い点は、エイズのような命取りの病気ではないと油断していると、自覚症状がほとんどないので感染や発病に気付かないまま進行し、治療しなければ何人も感染させたり不妊症という重大な結果を招くことです。妊娠を望む女性はまめにクラミジア検査を受けることをおすすめします。