山の手クリニック 性病について

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ヘルペス

解説

  • ・性器ヘルペス感染症は、単純ヘルペスウイルス(1型・2型) を病原とする性感染症である。
  • ・単純ヘルペスウイルスに感染しても80~90%の人はすぐには症状が現れません。感染してから数年~数十年後に症状が出る場合(再発)もある。中にはウイルスに感染後数日で症状が出る人もいる。この場合は再発時と比べて痛みや水疱、腫瘍などの症状が重く、治癒までの期間も2~3週間と長めである。
  • ・女性は性器クラミジア感染症に次いで第2位の感染状況。男性の場合には淋菌感染症、性器クラミジア感染症に次いで第3位。性感染症の中でもとても重大なものといえる。
  • ・一度感染したヘルペスウイルスは、口唇ヘルペスの場合三叉神経に永く潜伏し、神経に沿ってしばしば再活性化して再発し、口唇に腫瘍を作るように性器ヘルペス症の場合も腰骨随神経節に潜伏し、しばしば外陰腫瘍を形成し再発する。感染後、また再発後も抗体が作られ自然に治癒するが、抗ヘルペスウイルス剤などの投与により治癒されるまでの期間が短縮され症状も軽減される。しかし殺菌的には働かない為、再発は同じように起きる。
  • ・成人では80~90%が不顕性感染といわれており、成人女性の70%が30才までにヘルペスウイルス抗体を保有している。

臨床的特徴

  • ・外部から入ったウイルスによる感染で、感染後3~7日の潜伏期の後に外陰部に小水疱または浅い潰瘍性病変が数個出現する。発熱などの全身症状を伴うことが多い。
  • ・2~4週間で自然治癒するが、治癒後も月経・性交その他の刺激が誘因となって再発を繰り返す。再発疹は外陰部の他、殿部、大腿にも生じる。

病変部位

ヘルペスの病変部位

臨床症状

臨床症状により、急性初発型、慢性再発型、誘発型、無症候型の4つに分類される。再発を繰り返すうちに症状は軽くなっていく。

急性初発型(感染しても70~80%は無症状)

  • ・HSVに初めて感染して性器ヘルペスを起こす。
  • ・感染機会の2~10日後で軽い掻痒から始まり、全身症状として発熱・頭痛や倦怠感、性器に発赤・水疱・びらんが出来て激しい痛みを起こし、また足のつけ根のリンパ節の腫れ、圧痛、歩行困難、排尿困難や排尿痛などの症状が出てくることもある。口内炎や咽頭炎を合併することも多い。
  • ・ごく稀に項部硬直、羞明や頭痛が生じ、無菌性骨髄膜炎を起こすことがある。また、ウイルス血症を起こして全身感染を起こすことがある。
  • ・早期に正しい治療を受ければ1、2週間で治る。
  • ・急性初発型が治癒したのち約1/3が慢性再発型に移行する。この場合、疲労・月経・風邪などで体調が悪くなると反復性の性器ヘルペスを起こし、他人に感染させる不安もある。

非初発感染初発

  • ・症状の出現は初めてではあるが、すでに感染していたHSVが全身的あるいは局所的な免疫抑制状態になった時に再活性化されて病変を形成した場合。
  • ・免疫抑制状態は抗癌剤や副腎皮質ホルモンなどの薬剤の投与、下腹部の放射線照射や手術、妊娠などによってもたらされることが多いが、このようなことがなくてもストレスなどが誘因になることもある。HIV感染者やAIDS患者では免疫能力の低下に伴ってヘルペス病変がしばしば出現することが知られている。免疫抑制の程度が強いと病変も広く治りにくい。

再発型

  • ・潜伏しているHSVの再活性化により繰り返し再発することが特徴。
  • ・症状は比較的軽く1週間以内に治癒することが多い。時には10~14日も治らない例もある。
  • ・急性型の既往がはっきりしない場合もある。
  • ・病変は小さい潰瘍性病変や集簇性の小水疱である。病変のできる部分はだいたい同じであるが、時に少しずれたり反対側にできることもある。
  • ・腰痛・下肢のしびれ感など再発の前駆症状が数日前より起こる。
  • ・亀頭を除く陰茎部に好発する。
  • ・性器ヘルペスに初感染後、同じ仙骨髄神経節領域の殿部、またまれに足底に再発型として発症することもある。
  • ・再発のきっかけとなるのはストレスや女性では月経などである。再発の回数は月に2~3回というものから、年に1~2回というものまでいろいろある。

誘発型

  • ・知らないうちにかかっていたHSVが抵抗力が著しく落ちた時に再活性化して起こるもので、急性初発型と同様に激しい症状を起こす。
  • ・骨髄内の神経節に何年間も潜伏していたHSVが激しい疲労、ステロイドや抗癌剤の投与、糖尿病の悪化などで免疫力が低下すると再活性化する。

無症候型

  • ・自覚症状がないのに不定期に性器からHSVを排出するので注意が必要。

症状

  • ・感染しても全く症状がない事があるが、症状のある場合はウイルスの入った部分がむず痒くなり、数日すると細かい水疱が出来、ズキズキ痛む。痛みは10日位続き時には激痛になる。やがて乾いて治ってくるがウイルスは体に残り、抵抗力が弱くなったりすると再発する。
  • ・疲労時など他の病気と合併して発症することが多く、繰り返し発症する場合もある。

妊婦

  • ・妊娠中に感染すると胎児に感染し死産になることもある。ヘルペスに感染したことのある妊婦は分娩方法などについて医師に必ず相談する必要がある。
  • ・出産時に産道を通して胎児に感染することもある。

新生児

  • ・母親が妊娠中に初めてヘルペスに感染し、新生児がさらにヘルペスに感染すると生後から1ヶ月後に発症する。

検査

  • ・当院では血液検査によりヘルペスウイルスに対する抗体を検査しています。
  • ・感染の初期ではIgMを測定することによりヘルペスであることを診断し、感染から時間が経過しているものや再発型が疑われている場合は、CF(補体結合反応)によるヘルペス抗体価を測定し診断しています。
  • ・5日程で結果がわかります。

感染性

  • ・傷が完全に治らない間(1~3週間)は他人に感染させる危険がある。
  • ・再発しても症状がないと気がつかないまま他人に感染させてしまう。
  • ・唇などにヘルペスの症状があるとヘルペスウイルスが陰部に感染する。

免疫

  • ・初回感染で抗体ができるが再発を抑えることはできない。

性器ヘルペスの無症状時のウイルス排泄

性器に病変(潰瘍・発赤・疼痛等)がある時は、コンドーム無しの性行為でパートナーにウイルスを感染してしまうのはよく知られています。
最近は症状はないがウイルスを知らないうちに排泄していることが問題となっています。特に初めて感染した時は症状が治っても3ヶ月以内は高率でウイルスを排泄しているとされています。また、再発時の前後1週間も高率に排泄しているとされています。
それ以外の症状がない時期では全体として1~4%の日数が知らずにウイルス排泄しているとされています。
これらのことからたとえ病変・症状がなくてもパートナーに感染させる可能性があることを常に忘れないようにしましょう。
対策として症状出現時の性行為は避け、その治癒後1週間位も避けていただくのが良いかと思われます。無症候性ウイルス排泄に対してはコンドームの適切な使用による回避が最も有効です。
ヘルペスウイルスは家庭内の日常生活で感染することはほとんどありませんので、過度に不安を持つ必要はありません。ただ症状が出現している時などはタオルの共用などは避けた方が良いでしょう。

治療

  • ・できるだけ早期に十分量の抗ウイルス薬を投与する。
  • ・抗ウイルス薬を5日間使用しても改善傾向がない場合、細菌の二次感染を合併しているか他の疾患を考える。
  • ・抗ウイルス剤はウイルス自体を殺すのではなくウイルスの増殖を抑制し臨床症状の持続期間を短縮させる。そのために早期診断、早期使用することが大切。
  • ・内服薬・点滴静注薬があり、症状に応じて使い分ける。

当院での治療薬

1) 感染後、症状がきつい時

  • ・バラシクロビル(500mg):約7日間内服

2) 再発抑制療法

年6回以上再発を繰り返す方や患者が精神的・心理的に大きなダメージを受けていると考えられる場合、抗ウイルス剤の長期内服による抑制療法が日本以外では一般的に行われております(2005年12月現在、日本では保健の適用がない状態です)。低用量による長期ウイルス剤内服で再発の頻度及び無症候性ウイルス排泄(相手へ知らずにウイルスを排泄してしまう)を減少させることが臨床上確認されております。ある報告では症状の再発を70%以上低下させ、無症候性ウイルス排泄も6割減少させるという報告もあります。
内服の期間は半年~1年内服していただき、その後休薬し再発の頻度や症状の度合いを見ながら内服を再開するか中止するかを決めます。

日常生活での注意

  • ・治っても再発してしまうことがあるので、ピリピリなどの刺激感やかゆみを感じた時点で早めに適切な治療を受けることによりウイルスの活動を抑え、きれいに治すことができます。
  • ・皮膚症状が出ていない時は感染することはありませんが、水疱や腫瘍ができている時はウイルスが皮膚に出て活動している証拠なので、これがかさぶたになってはがれ落ちるまでは性交渉などの接触は避けるべきです。
  • ・体力が低下したのをきっかけに再発するので、普段から規則正しい生活を送り、過労・風邪・ストレスなどを寄せ付けない生活を心がける必要がある。深酒・性交・時差などでも再発しやすい。
  • ・アトピー性皮膚炎などの皮膚のバリアー機能が低下している者や、外陰部に皮膚炎などの病変を持つ者は感染しやすい。
  • ・当然、性交やキス・オーラルセックスなどの行為は避けるべきである。
  • ・感染能力は極めて高く、直接接触のみならず間接的な接触でも感染が成立する場合もある。すなわち手指を介して感染、タオル・浴用チェアや便座・食器などを介しての感染も成立しえる。患部に触れたものは全て感染源となる。しかし、このようなタオルや食器などの感染能力は持続性はなく、洗浄・洗濯後には感染能力を失う。発疹が見られる場合、特に殿部では局所をガーゼなどで覆いタオルの共有を禁ずる。
  • ・HSVの場合生体から離れたウイルスは紫外線・熱・エーテルなどの有機溶媒で容易に感染症がなくなる。したがって風呂の湯からは感染しない。
  • ・抑制療法中であってもコンドームの使用が勧められている。しかし再発は肛門・頸部・太腿などにも起こりうるのでコンドームの使用だけでは完全に防止できない。
  • ・患部を清潔に保ちむれないように気を付け、傷が痛む時には下着はきつくないものにする。患部がかさぶたになるまでは下着をお湯で洗って清潔にし日光によく当てて乾燥させる。
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