近年、オーラルセックスの広まりと共に、咽頭からクラミジアや淋菌が感染し、尿道炎などを起こしている方が増加しております。ある統計では淋菌性尿道炎の約60%、クラミジア性尿道炎の40%が風俗店などで働かれている人の咽頭からの感染とされております。
感染経路・・・コンドームで防げる?
- 基本的に咽頭への感染経路は、ディープキス・オーラルセックスなどによるため、コンドームを性行為時に着用していただけでは、防ぐことは困難です。
- 後にも述べますが、海外より日本での検出率のほうが高くなっております。これは、欧米と日本での性行動様式、性風俗など性を取り巻く環境に差がある(日本ではファッションマッサージなどの普及など)とされております。
感染者の現状
咽頭クラミジアについて
- 性器からクラミジアが検出された方の男性咽頭クラミジア検出率3.9~12.5%
- 性器からクラミジアが検出された方の女性咽頭クラミジア検出率10.5~26.1%
→海外では男女差は無いが、日本では女性のほうが咽頭クラミジアの検出率は高い。 - オーラルセックスを主に行う風俗の方(ヘルス等)のほうが性行為を主にする風俗の方に比べ咽頭感染率ははるかに高いことがわかっております。
→風俗の女性だけでなく、オーラルセックスを複数の異性としている一般の女性や、ホモセクシャルな男性は特にリスクが高いと言える。
咽頭淋菌について
- 性器から淋菌が検出された方の男性咽頭淋菌検出率12~29.4%
- 性器から淋菌が検出された方の女性咽頭淋菌検出率33.3~70%
→クラミジアと比べて検出率が非常に高く、クラミジアと同様、女性に多く、海外での平均検出率10%と比べても非常に高いと言えます。また、淋菌のほうがクラミジアよりも咽頭への親和性が高いと言えます。 - 性病クリニック受診した男性11%女性34.1%に咽頭淋菌が検出されたとの報告もあります。
→咽頭に感染リスクのある人なら性器に症状が無くとも感染している可能性を示唆。
症状・・・喉の見た目や症状でわかる?
- 咽頭クラミジア・咽頭淋菌による咽頭炎は、咽頭痛や発熱などの症状がほとんど無い。
- 見た目でも明らかな所見は無く咽頭所見に乏しい。
- よって、本人の申告以外、咽頭感染症を疑うのは困難。
- 実際の治療現場では性器の感染は治癒しても咽頭の感染は無症状のため残存し、新たな感染のリスクとなっていることが多い。
どんな人が検査をしたほうがいいの?
- 仕事でオーラルセックスをしている人は定期的に検査が必要
- 性器からクラミジア・淋菌検出された人(尿道の感染が消失しても咽頭は治療方法が違うため、残存していることが多々あります)
- ディープキスを含め、口での感染機会があった人
- 尿道炎・膣炎の感染中、パートナーと性行為はしなかったがキス等の接触があった人とそのパートナー
- 他の性病が見つかった人
- 咽頭炎と診断された後、内服の抗生剤等でもなかなか症状が改善しない人
検査方法・・・喉の奥を綿棒で擦ったりするのですか?
- 喉の奥をスワブという綿棒で拭って検査する方法
- 口腔内のウガイ液を検体とする方法
- 侵襲的にはウガイをするだけのほうが負担は少ない
- 両検査方法の検出率の差はほとんど変わらないか若干ウガイのほうが検出率は良い統計も出ております。特に咽頭クラミジアにおいては有意にウガイのほうが検出率が良いとされております(48人の性器クラミジア感染者:拭い咽頭検査で3人;6.3%、ウガイ咽頭検査で5人;10.4%の検出率であった)。
- 当院では低侵襲的なウガイにより検査を行っております。
治療は・・・飲み薬で治るの?
- 淋菌感染症は性器の感染であっても、多くの内服薬に対し耐性化を示し、無効なことが多くなっております。
- 咽頭の淋菌感染症は有効な抗生剤の点滴1回で(30分程度)95%以上の有効性が認められております。ただし点滴2週間後以降に検査で陰性となっていることを確認してください。
- 咽頭クラミジア感染の治療は性器のクラミジア感染に比べて、約2倍の日数がかかります。2週間以上の長期での加療が必要です。
もし見つかったらパートナーにも報告すべき?
- ディープキスやオーラルセックスでも感染する可能性がありますので、必ずパートナーにも報告してください。
- 咽頭に感染したり、女性の性器に感染した場合の多くは無症状で、パートナーからが自覚症状無くても安心できません。
費用は?
<診察・検査代>
咽頭淋菌検査:SDAまたはPCR法
検査報告書渡し全て込みで8,800円(税込)
咽頭クラミジア検査:SDAまたはPCR法
検査報告書渡し全て込みで8,800円(税込)
クラミジア・淋菌は性器に感染した場合、適切に治療されれば比較的短時間で治ります。しかし、咽頭感染は一般に知識が普及しておらず、検査も保険適応困難であったり、咽頭を念頭に入れての治療がされないことも多々あります。このため、咽頭にクラミジア・淋菌が残存してしまい、これらの感染の広がりの一因となっているものと考えます。症状がほとんどの方に出ないことも検査の普及の妨げになっていると思われます。怪しい感染機会があった場合は咽頭のクラミジア・淋菌の検査を受けられることをお勧めします。