性感染症の現状

性感染症の現状、どう思いますか?

現在、行政による防疫・公衆疫学的施策により多くの感染症が広まる事無く抑えられていることには、多くの方が感じていると思います。

しかし、性交渉により感染する性感染症は同じ感染症ですが、症状が無い又は少ないため忘れがちな存在となっています。

これは、あまりにも身近であると同時に後ろめたい部分にはなかなか目を向けない感情による所が大きいと考えられます。

このような現状において、クラミジア・淋菌の罹患率は図(1)のように男女共年々増加しています。
G7先進国のなかでは、日本だけと指摘もされ特異な状態と考えられます。
更にHIV感染者数の増加にも注目するべきで、クラミジア・淋菌と同じく推移している事が将来的に大きな問題であると思われます。

図(1)HIV感染者数・性器クラミジア・淋菌感染者罹患率とコンドームの出荷数の年次推移

クラミジア・淋菌の罹患率

この状況を回避するために、公衆衛生学的な防疫をする事はプライバシーに触れる部分が大であることを考えると非現実的で不可能です。
図(2)、(3)から見て若年者のクラミジア罹患率が年々増加していることからも、若年者への啓蒙が重要になってきています。

図(2)性器クラミジア感染症数と罹患率 - 女性

性器クラミジア感染症数と罹患率 - 女性
(熊本センチネルサーベイランス)

図(3)性器クラミジア感染症数と罹患率 - 男性

性器クラミジア感染症数と罹患率 - 男性
(熊本センチネルサーベイランス)

性感染症は「人類が存続する限り、最後まで存続する感染症である」と言われています。
しかし、「手遅れにならないうちに何とか増加を抑える事がわが国において必要である」とは言うまでもありません。

特に女性に怖い話

現在、クラミジア感染症が一番多いと言われています。
クラミジア感染症は、自覚症状が少ないため女性が放置しておくと卵管炎や骨盤内感染症を起こして不妊症や子宮外妊娠、早流産の原因となることが大きな問題になっています。

妊娠が判明したら、感染症の検査を行いますがクラミジアの罹患率は4~5%となっています。
しかし、“子宮頸ガン”の原因といわれるHPV(ヒトパピローマウイルス)罹患率は妊娠時検査の結果、図(4)のように地域に関わらずクラミジア感染症の倍以上であることがわかっています。

図(4)妊娠症例における中~高リスクHPV感染率

妊娠症例における中~高リスクHPV感染率

HPV(ヒトパピローマウイルス)は、100種類以上のタイプが確認されています。
そのなかで、16型・18型・52型をはじめ、子宮頚ガンの発症リスクが高いと考えられるタイプが13種類弱あります。
しかし、「HPVの感染=子宮頚ガン」ではなくリスクが高くなるという事です。
というのは、ほとんどは一過性の感染であり自分の免疫力によって排除されてしまいます。(図5)

図(5)HPV感染と子宮頚ガンの自然史

HPV感染と子宮頚がんの自然史

とは言え、細胞変異の初期段階にHPVが関与している事と感染の繰り返しが子宮頚ガンの感染リスクを上げる要因である事を考えると、HPV感染の有無をチェックすることは子宮頸ガン予防には大切と思われます。

HPV感染は、性的にアクティブな若い人に多く、子宮頚ガンは加齢と共に発症すると考えられてきました。
しかし、図(6)を見ると、最近数年間の比較では20歳代で10倍になっており、その傾向はこの施設に限られた事ではないと考えられています。
また、ガンに至らない前ガン病変といわれる“CIN3”検査結果の割合は若年者で多くなってきています。

図(6)子宮頚ガン患者の推移(年代別)

子宮頚ガン患者の推移(年代別)
(群馬県立がんセンター)

これは、大きな問題と認識されつつあり行政が行う子宮ガン検診指針(厚生労働省)でも30歳以上という前提から、近年20歳まで下げられています。

このように、無症候的に蔓延しているHPVですが臨床的に明らかな事項として、
 (1) 性器のHPV感染は性交渉で伝播する。
 (2) HPVはガンを惹起する型としない型にわけられる。
 (3) HPVの繰り返しの感染はガンの高いリスクとなる。
 (4) 子宮頚ガンのほぼ100%にHPVが検出される。
などがわかっています。

感染した場合には、
 (1) 高リスク型HPVに感染してもガンになるわけではない。
 (2) HPV感染そのものは病気ではなく、将来的に引き起こされる病気の検査を定期的に行うことが大切。
と言われています。

また、子宮頚ガンは他のガンと違い、
 (1) ガンの原因が明らかになっている。
 (2) ガンの原因を検査する方法がある。
 (3) ガンになるまでに検査で発見可能な長期間の前ガン病変状態がある。
ことにより“予防可能なガン”と考えられています。

子宮頸ガンは、このようなHPV感染によって引き起こされるガンですが、まだまだ認識が薄く全国平均の子宮ガン検診の受診率は20%にいたっていないのが現状です。

その原因として、
 (1) 時間がない
 (2) 恥ずかしい
 (3) 時間が合わない
 (4) 自分は大丈夫
などが、アンケート調査で明らかになっています。

このHPV感染にまつわる子宮頚ガンは、今後も更に重要な問題の一つとなってきます。
お一人お一人が少しでも注目していただければ幸いです。

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